運動会シーズンを控え、この時期になるとモノ系雑誌ではビデオカメラの記事が増えてきます。日本ではSD解像度のMPEG-4系カメラが三洋のXactiを除いてすっかり廃れてから、ビデオカメラの話題が少ない期間がありましたが、撮影解像度のHD化、特にAVCHDの新製品ラッシュもあり、各誌の取り上げ方も今年は気合が入っているように感じられます。
それらの記事に共通する論調が「テープの時代が終わった」というもの。商品紹介のページでもテープを使用するHDV製品は完全に除外されています。
ERBテレビではDV/HDVをベースとしたシステムを使用していますので、これだけ見るとHDVの将来は暗いように思えますが、私はHDVユーザーとしてあえてこの動きを前向きにとらえたいと思います。
これまではHDに対応したカメラはHDVしかなかったため、HDVがローエンドからハイエンドまですべてカバーする必要がありました。しかし、AVCHDが一般消費者向けに普及することでHDVはローエンドをカバーする必要がなくなります。その分ハイエンド~業務ユーザー層に重点を置いた製品作りができることになり、より高みへ向かうことになるでしょう。つまり、かつての一眼レフカメラのように素人さんお断りの製品となるわけです。
実際に、映像系雑誌・サイトではMPEG-2を使用するHDVの方がMPEG-4 AVCを使用するAVCHD各製品より解像度が低いにもかかわらず画質は上、という評価で一致しています。
また、HDV自身もテープから離れ、データフォーマットとして扱われるようになるでしょう。HDVテープからPCでキャプチャしたときに作成される.m2tファイルは互換性の高いHD映像用ファイルフォーマットとして普及しつつあります。これは、MPEG1の時代に、同じMPEG1ファイルでありながら再生環境間の互換性がままならなかった中、「VideoCD形式」を指定してエンコードしておけば高い互換性が得られたのに近い状況です。
こうしたことからHDVのカメラは家電量販店の店頭からは徐々に姿を消していくでしょうが、玄人向け規格として映像の世界では永く生き続けるでしょう。